茶経の茶を再現

先日、茶経を再現したお茶をいただきに
とある奈良の山中まで行ってまいりました。

好天に恵まれ、山中までの足も無事確保。
山からの景色はとても素晴らしく
奈良市街が一望できました。

行ってまいりましたのは、奈良遷都1300年祭で
7000人にふるまわれた
天平茶会の本格派版です。

『茶経』の世界を体験
http://bifuuryuu.com/page017.html

美風流お家元の山居は「怡心軒」という
風情あふれた文人趣味のお住まいです。

受付を済ませると茶の花による香煎が出されました。
茶の花、いま時分に咲いていますね。
こちらは、茶の花を乾燥させて保存したものです。
自家園に茶の木があり、その木から採られたそうです。
上田秋成の著書に載っている作り方に合わせて作られたそうで、
茶にされた茶の香りと茶の花の香りとでは
いずれも好い香りながら、まったく違うものでした。
花のほうがすっきりした感じといえるでしょうか。

さて、午前中は、『茶経』の勉強から。
道具や茶そのものをいかにして復原したか
についてレクチャーを受けました。

茶経の茶の復原
http://bifuuryuu.com/page015.html

『茶経』は漢文ですが、現代日本人は、明治大正の日本人と比べても
はるかに漢文の素養がありません。
また、時代背景や文化背景というものも勘案しなくてはなりません。
言葉一つとっても、現代とは感覚が違いますし
『茶経』に指定されている材料・寸法での道具の復原は
材料を入手し吟味するところからのご苦労があったようです。

茶経原文
Wikipedia
http://zh.wikisource.org/zh/%E8%8C%B6%E7%B6%93
国学(簡体字による原文)
http://www.guoxue.com/gxzi/cj/cj.htm
日本語訳
http://www.989.jp/H/Literature/TheClassicOfTea/

この『茶経』の茶は
「餅茶(ヘイチャ)」であって「団茶(ダンチャ)」ではないそうです。
違いはというと、工程ごとでの些細な扱いでこの違いが出るようなのですが、
猫が理解したところによれば、
団茶は中までガッチリと固まっている固さ、
餅茶はミルフィーユやパイの皮のような、表面は固いけれども中はサクサクした感じ
なのだそうです。
   おや、書いていて弥生式土器と縄文式土器を連想してしまった。。。
保存方法もかなり違うようで、餅茶は何より
湿度管理(乾燥状態に置くこと)が大事みたいです。

茶碾(ちゃてん)でこの餅茶を引くと
茶の粉ができます。
この「茶碾」は「薬研(やげん)」とは違い、
擂る面が尖っておらず、丸くなっています。
その下のすり鉢に当たる部分も擂る部分に合わせて丸くなっています。
これらはすべて木製、これも茶経に指定があるそうで、
今回はエンジュの木を用いたとおっしゃっておられました。
擂る機能を満たすための、緻密な目の木材でこのサイズを手に入れるのに
相当ご苦労されたようです。

茶自体は、宇治の茶園までお社中で茶摘みに行かれ、
茶経の指定通りに、摘む時期、摘む芯
通常の新茶を摘む時期より早い時期に、
ほんの先の芽だけを摘みます。
これが飲めば仙境に通じる(通仙)ような
お茶を生むのではとおっしゃっておられました。


その茶の粉を沸騰した湯に入れ
 この沸騰も茶経に指定があります。
茶の花を点てます。
茶の花とは?
こちらは、連客の方によれば
茶にはサポニンが含まれている
ということで、その泡立った様子を
「茶の花を点てる」と称するようです。

盧仝「七椀の句」によりますと、
茶の強さも相当なものと思われますが
その状態を実際に服して体験してみていただきたい
とのことでした。

盧仝「七椀の句」
http://www.geocities.jp/iwa_kaz/soshoku_sencha.htm
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%A7%E4%BB%9D
「お茶で仙人になる?」(asahi.com)
http://www.asahi.com/world/china/cha/TKY200806070171.html


このように、ご連客も含め、質疑応答おしゃべりの弾む
楽しい勉強会となりました。

お昼がまた、お手作りの黒豆ご飯に、煮物椀、
その他、美しい点心が盛られた器。
自宅に窯もあるようで、茶経の道具再現でも
ちょうどよいものが見つからないのででということで
お作りになったものも。
気持ちも目も満足したところで、
午後は茶を飲むという本番?です。

いくつも試作をされたので、
茶経にも出ている、見た目の悪くなってしまった
餅茶も一通り拝見。
やっぱり書いてある通りなんだなと実感されたそうです。
やってみないと分からないことっていろいろな場面であるものですよね。

この見た目の悪い茶は、味はまあともかく、
工程に手抜きをしたり、管理が不十分だった証拠
というわけだそうです。
ここで問われているのは製造者の志といったところでしょうか。
茶経のお茶は通常の庶民(労働階級など)が喫するお茶ではないことがよくわかります。

この餅茶がまた、よい香り!
フローラル、フルーティ、
まるでワインの香りの形容で言いたくなるような
すばらしい香りでした。
日本の抹茶や煎茶の香りとは違い、
強く、濃く、深く、
中国茶なんだな~と思わされました。

餅茶の保存は現代文明の利器、冷凍庫保存のようです。
#電子レンジという乾燥の利器もありますし(笑
色鮮やかな緑色なのですが、これを
茶色くなるまで焙ります。
茶経によると
焙ると「膏(コウ)」という照りのある様子になるらしいのですが、
これは今回は猫には分かりませんでした。
この焙った茶を茶碾で引いて茶の粉を作り、
沸騰した湯で簡単に煮出し、それを注ぎ分けて飲む
という喫茶方法です。
三服いただきましたが、
 >三椀捜枯腸
 >唯有文字五千巻
という心地になるには、猫は茶に耐性がありすぎるみたいです。
#実は5服くらい飲んでしまったのですけれども(笑
#>五椀肌骨清 だったら嬉しいですにゃ。

さて、話は弾み、お家元に
琴(キン)や洞簫(ドウショウ)まで奏でていただきました。
これらは文人にはなくてならぬ楽器なのですが、
それらも実際に奏でてみてこそ分かる心地というのがあるようで、
文人生活に憧れる猫としては羨ましい限りです。
文人煎茶の家元としての美意識や哲学が随所にあふれた
暮らしぶり、お話しぶりでした。

茶経の茶を使った茶会
http://bifuuryuu.com/page016.html


○『茶経』参考文献
『茶經詳説』 大典禪師著
安永3 [1774],
 現在も使える、場合によっては現代語訳より読みが深く正確な書籍。

『茶経詳解 : 原文・校異・訳文・注解』
布目潮フウ(フウはさんずいに風)著、淡交社
 現在、新刊で一番手に入りやすい。図版が多くてわかりやすい。しかし図版は必ずしも正確かどうかは不明な点もある。

『茶経・喫茶養生記』
林左馬衛, 安居香山著
明徳出版社
1975,
 お家元が最初に読んだ茶経の本。今でも枕元に?

『中国の茶書』布目潮フウ(フウはさんずいに風)、 中村喬編訳
平凡社東洋文庫289(ワイド版でも出ています)
 原文がないがまだ普通に手に入るとのこと。

『中国茶葉歴史資料選輯』
陳祖キ(「規」の下に「木」), 朱自振編
農業出版社、1981
 北京での発行です。中国農史専題資料彙編という叢書の1冊。

『唐宋茶詩輯注』趙方任輯注
中國致公出版社
2002.7
 こちらも北京発行です。詩は史料として扱い辛いが、
 上流階級(皇帝・貴族)ではない、
 庶民(といっても詩を作れる階級ですが)の茶の様子が分かるとのこと。
 まだ研究の進んでいない分野とおっしゃっておられました。


こちらも参考になる記事です。
http://blog.goo.ne.jp/luna2816/e/e4f5d5394bd0202f31a3366f743b9c9f
天平茶会のスタッフブログへのリンクも貼られています。


       山猫屋@管理人

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック